ぼくとかわいい君と【短編集】second (ページ14)

今日:25 hit、昨日:12 hit、合計:27,272 hit

・ページ14

side:nb

俺は今、彼氏である佐久間に膝枕をしてやっていた。佐久間からの要望で。佐久間も俺もめちゃくちゃ背が高いって訳じゃないから、ソファーに横になっても脚は飛び出さない。俺の柔らかくも無い膝に頭を預け、佐久間は心地よさそうにしている。
俺は恥ずかしさでなんも言えなくて、佐久間も何も言わないから、この空間はめちゃくちゃ静かだ。しかしその瞬間、スーッと佐久間の手が俺の膝を撫で、「ヒッ」と俺の情けない悲鳴が部屋に響いた。メイド服の俺は生脚だから撫でられる感触が直に伝わってくるのだ。

「翔太の肌すべすべ。きもちぃ」
「変態くさいんだよ！」

俺の文句に佐久間はケラケラと楽しそうに笑った。それになんかイラッとして今すぐ頭を地面に落としてやろうかとすら考えた。

「翔太、チューしてよ」

不意にそう言われ、俺はピタリと固まってしまう。だって俺から佐久間にキスしたこと無いから。俺はいつもねだってばかりで、自分からするのは恥ずかしすぎて避けていた。
でも、ここで拒絶したら、佐久間に嫌われるかもしれないし…｡

なんで俺がこんな格好をしているのか。それは、数日前に阿部からもらったアドバイスが原因だった。

「翔太も可愛くメイド服着てみればいいよ」
「はあ!?」

正直、何を言っているんだこいつは、と思った。
メイド服なんて男の俺に似合うわけないし、むしろそんな格好してるのを見られたら佐久間にドン引きされそうだ。
俺は嫌がったが、阿部ちゃんに大丈夫、と背中を押され頷いた。

「萌えといえばメイドさんじゃない？」
「その理論は分かるけど…」

なぜメイド服なのか聞くと、阿部ちゃんは意外と単純に考えていたみたいだ。

「翔太も佐久間に“萌え”を提供すれば、飽きられることなんて無いって」

その日の内に俺はネット通販で男性用のメイド服を購入してしまった。申し込みが完了した瞬間、不安が頭をよぎる。

メイド服姿を佐久間の推しと比べられたら絶対勝てなくね？やっぱり焦りすぎたかも…。

それでも注文取り消しはしなかった。それから二日後にはメイド服が届いて、そして今日、佐久間を家に呼んでメイド服を着たのだ。

これが成功したのかどうかはよく分からない。ただ、佐久間は俺の格好に引いている様子は無く、むしろちょっと楽しんでるみたいで安心した。