ぼくとかわいい君と【短編集】second (ページ10)

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さくなべページ10

side:nb(女装表現あり)

「佐久間ってさぁ、女の子の方が好きかな」
「…どうしたの急に」

今日はメンバー全員での番組の収録があり、今は楽屋で待機中だ。後ろでは他メンバーが騒ぎ、俺は阿部ちゃんを連れ出して向かい合って座っている。
俺の藪から棒な質問に阿部は理解出来ないとでも言いたげな様子だ。パチパチと目をしばたく様はちょっとあざといと思った。

突然だが、俺と佐久間は恋人同士だ。それはメンバー全員知っている。佐久間と俺の性格は真反対で、佐久間が一方的に話しかけ、俺は時々悪態をつきながら話を聞いているという一見恋人では無いような感じだけど、一応恋人だ。
俺自身、めちゃくちゃ佐久間のこと好きだし…。

そんな佐久間は自他共に認める超オタク。アニメやマンガといったものが大好きだ。別にそれを否定する気持ちは全くない。佐久間のオタクぶりは今に始まった事じゃないし、なんなら付き合う前から知ってたし。ただ＿＿

｢アニメとかマンガの女の子って可愛いじゃん…｣
「あーそういうことね…」

俺のたった一言から言わんとしていることを察したらしい阿部ちゃん。

つまり、俺はアニメやマンガ＿＿二次元の女の子に嫉妬してるのだ。そして、佐久間に飽きられるのをめちゃくちゃ恐れている。

佐久間には前に「もちろん二次元の女の子は可愛いし好きだよ？でも、翔太はもっと特別な好きなの！」と言われたことがある。俺の不安を取り除くためであろうその言葉にめちゃくちゃ安心したのだが、今また不安になってしまっている。

「二次元の女の子って胸大きいし、柔らかそうだし。最近はさ、アニメのキャラの声優も可愛いし、アイドルとかやってるし、歌も上手いじゃん。俺、勝ち目無いっていうか…」

男たるもの、そういうのに惹かれるのが普通だ。
男の俺は胸とか無いし、あるとしても辛うじて筋肉がちょっとあるくらいだし、何より柔らかくない。佐久間がちゃんと満足出来ているか、正直自信が無い。

「佐久間は意外とハッキリしてるとこあるじゃん？だからそんな不安にならなくていいんじゃないの？」
「でも…」

佐久間にフラれるのがこんなにも怖いなんて、思ってなかった。
黙りこくった俺に、阿部は「大丈夫だよ」と笑った。

「俺にいい考えあるから」